相続した非上場株式の売却の特例

相続で取得した非上場株式を、相続開始から3年10か月以内に発行会社に譲渡した場合は、課税される所得税や住民税が大きく軽減される場合があります。

上場していない株式会社のオーナー経営者等に相続が発生して、親族等の相続人がその会社の株式を相続する場合を考えます。このようなとき、相続税の納税資金の確保など、様々な理由があると思いますが、その相続した株式の全部または一部を発行会社に買い取ってもらうことがあると思います。

ここで、株式を譲渡したときに、その譲渡した人にとっての儲けと税法上考えられる部分については、所得税や住民税が課税されます。

その税金算定の原則的な方法は、その譲渡収入の一部には、会社が株式の持ち主に渡すべき配当が含まれている可能性があることを前提とします。

すなわち、株式の譲渡代金が、その株式に対応する会社の元手部分である、貸借対照表を基とした税法上の資本金等を超えている部分は、会社がもらった元手を上回って株式の持ち主に渡したのであり、配当に類似するという考え方です。そのため、その超えている部分は、配当所得として課税されることとなります。

この配当所得は累進課税のために、課税所得が大きくなると所得税の税率もそれに応じて段階的に上がっていきます。現在の所得税の最高税率は45%で、それに住民税の10%を合わせると、55%となります。そのため、所得税や住民税の課税所得全体の金額が多額になる場合には、株式の譲渡代金のうち、半分くらいを税金として納付しなければならないということも起こり得ます。

ここで、このような事態を緩和する制度が設けられています。それは、一定の要件の下で、株式の譲渡収入全体の金額を所得税法上の譲渡所得の計算に含めて課税するというものです。この場合、基本的には、譲渡収入から、株式の取得費用や譲渡に直接かかった経費を差し引いた金額が譲渡所得とされて、所得税と住民税を合わせて、約20%の税率となります。

55%と20%の税率の違いで、場合によっては、課税される税金に何千万円の差がでることも珍しいことではありません。

この税率を約20%とする方法は特例であるため、一定の要件を満たすことが必要です。主な要件として、以下のものがあります。
・譲渡対象の株式が相続税の課税対象の非上場の株式であること
・譲渡する相続人に相続税が課税されていること
・発行会社への譲渡により金銭等を受け取っていること
・相続開始から原則として3年10か月以内に譲渡すること
・相続人と発行会社が一定の届け出を提出すること
細かく決められているため、要件に該当するか慎重な検討が必要です。

また、この非上場株式譲渡の特例と併用して、相続税の取得費加算の特例も適用が可能です。これは、一定の要件の下で、原則として相続開始から3年10か月以内の相続財産の譲渡については、納付した相続税の一部を譲渡した相続財産の取得費に含めて、譲渡所得を少なくすることで、課税される税金も少なくすることができるというものです。この取得費加算の特例を、上記の非上場株式譲渡の特例と合わせて適用することで、譲渡所得に係る税額をさらに軽減できる場合があります。