生活に通常必要でない資産の損失
生活に通常必要でない資産の譲渡による損失は、所得税の計算において、原則として他の所得と相殺をすることはできませんが、譲渡所得の枠内では、ほかの資産の譲渡による利益と相殺をすることができる場合があります。
貴金属などの個人が所有しているものを売却して、感覚的に儲かった、あるいは損をしたということがあると思います。このようなものは、基本的な考え方からは、所得税の計算の譲渡所得というものに分類されて所得税の課税の対象になります。儲かったのであれば、それに税金を払う力があると考えられて、所得税を支払う義務が生じます。逆に、損をしたのであれば、税金を払う力が削がれたという考え方で、所得税の減額などの処理がされます。
譲渡所得の計算では、基本的には、売却による収入から、その売却資産の取得に要した支出と売却を実行するために直接的に要した支出を差し引いて、譲渡損益を算定し、譲渡所得の計算の基礎とします。このとき、車両などの、使用あるいは期間が経過することなどによって減価するものについては、それに応じた減価の金額を、取得に要した支出から差し引かなくてはなりません。
ここで、生活に通常必要な動産については、原則として譲渡による所得に対して非課税とされており、その売却で利益が出ても所得税がかかりません。その代わりに、損が出たとしても、所得税の計算上考慮されず、なかったこととされます。そのため、生活に通常必要な家電や自家用車などを売却しても、所得税の計算上、通常は影響しないこととなっています(宝石や美術品等については、生活用動産として所有していても、1個又は1組の価額が30万円超のものは、所得税法上の生活に通常必要な動産として扱われず、課税の対象となります)。
それに対して、生活に通常必要でない資産については、所得税の課税対象になります。生活に通常必要でない資産とは、簡単にいうと、主として趣味や娯楽などのために所有していて生活に通常は必要でないもののことです。そのため、金地金や宝石、別荘等の生活に通常必要でない資産を売却して利益がでた場合は、通常はその利益に対して所得税が課税されることとなります。
ただし、生活に通常必要でない資産の売却による損失は、政策的に制限がかけられていて、相殺できる所得の種類が限定されています(ここでは譲渡所得に分類されるものを対象としています。金地金や宝石等を営利を目的として継続的に売買することにより、それによる所得が事業所得や雑所得と分類されるもの等を除きます)。そのため、所得の区分が異なる、事業による利益や給与の収入などと相殺することが原則としてできません。このことから、生活に通常必要でない資産の損失については、利用しづらいという印象があり、所得税の申告において漏れてしまっていることもあるかと思います。
しかし、生活に通常必要でない資産の損失も、同じ譲渡所得で分類されるものについては、その所得と相殺することができます。
生活に通常必要でない資産の譲渡による所得のうち、別荘などの土地や建物等については、土地建物等の譲渡による分離課税として別枠での譲渡所得となります。それ以外は、総合課税の譲渡所得という分類になります(株式等を除きます)。
生活に通常必要でない資産の譲渡による損失も、この土地建物等の譲渡による分離課税の譲渡所得の内部、あるいは総合課税の譲渡所得の内部では、ほかの譲渡による所得と基本的に相殺することができます。
例えば、キャンピングカーと金地金の売却は、多くの場合、生活に通常必要でない資産の売却として総合課税の譲渡所得に分類されます。この場合は、どちらも総合課税の譲渡所得の枠内であり、キャンピングカーの売却での損失を、金地金の売却による利益と相殺することができます。
生活に通常必要でない資産を売却したときの所得税の計算は、政策的な見地からの影響が強く、直感的に理解することが難しい内容になっていると思います。まず基本内容を把握して、課税される所得税の大筋をイメージできるようになることがいいと思います。

