望ましい現預金残高

企業が保有すべき現預金残高に一律の正解はありませんが、一般的に企業の安全性を確保するために、最低限、月商の1ヶ月分の現預金残高を保有することが望ましいとされます。

企業経営では、いわゆる黒字倒産というものがあり、会計上は利益が出て黒字でも、現預金が必要な時点で確保できていなければ、倒産してしまうということがあり得ます。

このような事態を防ぐために非常に有効であるものが、現預金残高の余裕です。企業経営においては、事故の発生など予見できないことが多くあります。予見できないので、前もって具体的に対策を準備することはとても難しいと思います。具体的対策ではなく、一般的な防御策として、ある程度の緩衝材としての現預金残高の余裕を持たせておくということになります。

具体的にどれくらいの現預金を保有しておけば安全と言えるのでしょうか。企業の規模や業種によって最適な現預金残高は異なりますが、一つの目安として、月商1か月分、すなわち年間売上の12分の1の金額を保有することが望ましいです。できれば、3か月分あるといいのですが、それが難しい場合は、1か月分を確保しておくことが一般的に良いとされます。これによって、大口得意先の倒産などで、急に資金繰りが悪化した場合に、銀行に追加融資を依頼するなどの対策をとる時間を確保しやすいと思います。常に資金に余裕を持たせておくことで、経営者の精神的な面からも余裕ができるという効果もあります。

そして、最低限保有すべき現預金の残高は、最も現預金が少なくなるタイミングの残高であることにご留意ください。例えば、月末に入金が集中して、20日当たりに支払が集中するのであれば、20日過ぎに現預金が最も少なくなると思います。そのタイミングでも、余裕のある現預金残高を確保することで、突発的な事態に対して対応する効果が高まります。