貸借対照表の資産と負債の考え方
貸借対照表の資産は将来のお金の流入の現在価値で、負債は将来のお金の流出の現在価値と考えることができます。貸借対照表の資産と負債の定義にはいろいろな理論があり、このようなお金の流入や流出のみで説明できない部分も多くありますが、大事な視点なので、そこから貸借対照表に計上されているものを見るとその理解がしやすくなると思います。
貸借対照表の資産・負債を将来のお金の流入・流出で測る方法は、資産負債中心観という会計理論に基づくものです。その理論から貸借対照表の資産と負債をより厳密にいうと、資産は将来の経済的便益で、負債は将来の経済的便益の流出といえます。その経済的便益をお金(現預金)と言い換えた場合、理論的には少しずれが生じることもあると思いますが、簡便な考え方として問題ないと思います。なお、貸借対照表の純資産は資産と負債の差額として計算されます。
資産は将来のお金の流入となりますが、将来のお金は現在に割り引いて測る必要があります。簡単に考えると、現在のお金を基本的にリスクのない国債に投資すると、将来利息を生むことができるために、将来のお金と現在のお金の価値は同じではないということです。その利息の分だけ割り引いて測る必要がありますので、名目上は同じ金額であっても、将来のお金は、現在のお金より価値が小さくなります。
簡便な計算例で考えます。ある資産があって、それを持っていることによって、1年後、2年後、3年後に100万円ずつお金が入ってくるものとします。そのまま足し算すると、100+100+100 = 300万円の金額の資産となります。しかし、前述したように、お金は将来の方が価値が少なくなるので、それを考慮しなければなりません。よって、厳密な計算ではありませんが、1年後は95万円、2年後は90万円、3年後は85万円といったように足し算して、合計270万円として資産を計上するようになります。
このような考え方で、具体的な資産と負債の計上を考えます。なお、以下の例はあくまで資産負債中心観をもとにした簡便な考え方で、実際の会計理論とは異なるところがあるのでご了承下さい。
売掛金や短期の未収入金は回収予定の金額が計上されていて、買掛金や短期の未払金は支払予定の金額が計上されています。ここで、回収や支払は近い将来を想定していますので、お金の時間価値は基本的に考慮しません。ただし、予定通り回収できないこともありますので、それを貸倒引当金として売掛金や未収金から控除して計上します。
建物や機械などの減価償却資産は、購入金額から、その金額を一定期間にわたって控除していく減価償却というもので、時間とともに計上額を少なくしていきます。将来のお金の流入から計算したものではありませんが、厳密にそれを予想して計算すると恣意性が入って、計算結果が信用できないものとなってしまう恐れがあります。よって、客観性を担保するために、実際に購入した金額(理論上は、将来流入するお金の現在価値で市場での購入金額が決まります)で資産を計上して、それをその資産の耐用年数にわたる時間の経過とともに減らしていくという方法をとっています。残っている使用可能期間が減っていくことで、将来のお金の流入能力である資産価値が目減りして、それについて減価償却費という名目で資産計上額を減らしていくという考えができると思います。
借入金は、通常、元本の返済金額の合計額が負債の金額として計上されることが多いです。将来のお金の流出の場合は時間価値で割り引く必要があるので、返済金額と借入金計上額が同じということはおかしい感じもします。しかし、それは支払利息を将来のお金の流出に加算することで、将来のお金の流出は借入金の計上額よりも、名目上大きなものとなり、借入金は将来のお金の流出額が現在価値に割り引いて計算されているということができます。
貸借対照表などの決算書類については、たくさんの利害関係者がいて、公平性や客観性を大事にしなければならず、技術的に純理論とは異なる様々な計算の制度を用いています。そのため、将来のお金の流入・流出により資産・負債を計上する理論をそのまま当てはめることはできないこともありますが、貸借対照表を理解する視点としてとても有用と思います。


