負担付贈与での譲渡所得の発生と財産の時価評価
ここで、負担付贈与の場合、贈与を受けた人にとって税金を計算するうえで、土地や建物などの贈与財産が、時価で評価されることに注意する必要があります。通常の贈与では、贈与を受けた人が一定の場合贈与税を納めることとなりますが、贈与税を計算するうえでの財産の評価額は、相続税評価額というものになります。
この相続税評価額は、一般的に時価の8割程度で、また貸家などに相続税評価額特有の割引の制度もあり、時価よりも税金の計算のうえで有利なものとなっています。しかし、負担付贈与の場合、時価で評価するため、贈与税計算のうえで通常の贈与よりも不利になります。
このように負担付贈与は通常の贈与とは違い注意する必要がありますが、当事者としては通常の贈与のつもりが、気づかないうちに負担付贈与になってしまっていることもあります。
例えば、賃貸物件を所有していて、それを親族に贈与する場合に、その賃貸物件に入居している人への敷金の返還義務が、その賃貸物件の贈与を受ける人に生じることがあります。賃貸物件そのものの評価額と比べて、敷金の金額はあまり大きくないことが一般的なので、感覚的には負担付贈与ではなく通常の贈与になると思います。しかし、税金の計算のうえでは、敷金の返還義務という負担を負っていることで、原則的に負担付贈与として扱われてしまいます。
負担付贈与となると、贈与税の計算のうえで賃貸物件の評価額が相続税評価額ではなく、時価となります。上でも述べたように、相続税評価額は一般的に時価の8割程度で、また貸家の評価額減という相続税特有の有利な制度もあります。そのような相続税評価額の有利な点を受けられないこととなります。
なお、この例での対処法として、賃貸物件の贈与と共に、返還義務の対象となる敷金に相当する現金も贈与することで、負担付贈与ではなく通常の贈与とされる方法があります。