GPIFの資産運用方法
ここから、GPIFの運用方法についてより細かく見ていきます。
GPIFが、投資資産の構成割合の目標を決めて運用していることは、分散投資となっています。
分散投資の主な目的はリスクを軽減することです。投資した資産には将来損失が発生するリスクがあります。将来のことは確実にはわからないため、投資資産の価値が高まって利益を得られることもあれば、価値が下がって損になることもあります。
ここで、例えば、値動きが逆になりやすい異なる資産を二つ持っている場合、一方で損失が発生しても、もう一方で利益が発生して、全体としては損失を軽減させることができます。このようにして、持っている投資資産を分散させることで、リスクを軽減させることができます。
また、GPIFは、市場変動によって、目標の25%ずつの資産構成割合から乖離した場合には、リバランスすることで、目標の25%ずつの資産構成割合に戻しています。
基本的なリバランスの方法は、高くなった資産を売り、安くなった資産を買うことにより、目標の資産構成割合に戻すことです。
リスクを軽減させるには投資の分散が有効で、どのように分散させるかは、その投資主体の状況に応じて投資の初めの時点で決めて、それを不必要に変更せずに持続させることがよいとされます。
リバランスは、時間の経過による市場変動で資産構成割合が変化することにより、想定以上のリスクを抱えてしまった場合に、当初の資産構成割合で想定していたリスクに戻す効果があります。
また、高い時に売り、安い時に買うという儲けが出やすい行動にもつながりやすくなるため、全体として利益が出やすくなる効果もあります。
GPIFの主な運用方法のパッシブ運用について、その有利性はCAPMという計算モデルで説明されます。CAPMは1960年代に著名な経済学者によって発表された計算モデルで、投資資産の期待利回りの推定のために、世界中で広く使われています。それによれば、市場全体の資産の構成割合によって、手持ちの資産を構成することが最も効率的な運用とされています。そのため、その理論からは、個々に投資する資産を吟味して選択するよりも、市場全体の値動きに連動するように投資するパッシブ運用が有利となります。GPIFの運用方法も、基本的にCAPMの計算モデルと整合しています。
また、GPIFは運用の目標について、短期的にはマイナスがあることを許容しており、長期で運用利回りを確保することを目標にしています。
市場は短期的にはランダムウォークと呼ばれることがあり、近い将来にどのように動くかは、ランダム的な要素が大きく、短期的にはその予想が非常に困難と言われます。このことから、短期的に利益を確保することは幸運不運の要素が大きくなると考えられます。
それに対して、長期的には、ある程度の不確実性はありますが、計画的に投資の利益を確保することを目標にすることができます。これまでの長期的な市場の成長が、基本的には今後も続く可能性が高いということを前提に、将来の市場の成長によって生まれる投資の利益を確保できるように、投資するというものです。